中小企業や士業事務所、クリニックでは、
売上や利益に対して、必要以上の役員報酬を受け取っている社長や理事長、代表の先生を見かけることがあります。
もちろん、会社が毎年成長を続け、利益も右肩上がりであれば話は別です。
誰よりも責任を背負い、誰よりも苦労し、会社を成長させているのであれば、高い報酬を受け取ることは自然なことです。
しかし、業績が伸びていないにもかかわらず、自分だけが多くの報酬を受け取り、会社への投資よりも自分の生活を優先してしまう。
この状態は、組織に大きな歪みを生みます。
中小企業では、「節税だから」と利益を残さず、役員報酬を増やしてしまうケースがあります。
一方、医療法人では、法人に利益を残せば法人税などの負担が発生します。また、多くの医療法人では、内部留保した財産を将来、個人の資産として自由に受け取れるわけではありません。
そのため、役員報酬をどこまで受け取り、どれだけ法人に利益を残すべきか、そのバランスに悩むケースも少なくありません。
会社が成長するほど、会社は社長一人のものではなくなります。
社員、お客様、取引先、地域社会を支える「公の器」へと変わっていきます。
そして社員は、社長が思っている以上によく見ています。
「利益は出ていないのに、社長や役員だけ給料が高い。」
「残業代は厳しく管理されるのに、自分にはお金を使っている。」
そんな空気は、驚くほど早く社内に広がります。
以前、脱税で摘発された経営者を何人も見てきましたが、共通していたのは、会社のお金を私的に使うことへの抵抗感が薄くなっていたことです。
豪華な社長室。
事業とは関係のない高級家具。
必要以上の経費。
もちろん、それが社長の意欲向上につながり、結果として会社の成長に寄与するケースもあるため、一概に否定することはできません。
実際に、社長室へ巨大なベッドを置いていた経営者もいました。
それで会社が大きく成長し、社員も豊かになっているのであれば、外野が口を出すことではありません。
しかし、隠れてやらなければならないようなお金の使い方であれば、最初からしないほうがいい。
綺麗ごとだけで経営はできません。
利益を残すために厳しい判断をすることもあれば、時には割り切った意思決定が必要になる場面もあります。
それでも、後ろめたさのない意思決定を心がけることは、経営者として忘れてはいけない姿勢です。
たまたま時代の流れに乗って利益が出ている間は、それでも会社は回るかもしれません。
しかし、市場環境が変わった瞬間、社員の信頼は簡単には戻らず、組織は一気に崩れ始めます。
会社が長く成長し続ける経営者ほど、投資するのは「自分」ではありません。
未来への投資。
クライアントへの価値向上。
社員への還元。
そうした積み重ねが、継続的な利益となり、最後は自分自身に返ってきます。